
ワインの収量:品質と経営のバランス
ぶどう酒の出来高、つまり収量とは、ある広さの畑からどれだけの量のぶどう酒が作れるかを示す目安です。普通は、1ヘクタール(100メートル四方の正方形)の畑から何ヘクトリットルのぶどう酒が得られるかで表します。1ヘクトリットルは100リットルなので、例えば「60hl/ha」と書かれていれば、1ヘクタールの畑から60ヘクトリットル、つまり6000リットルのぶどう酒が作れるという意味です。
この収量は、ぶどう酒の産地やぶどうの種類によって大きく変わります。例えば、フランスのボルドー地方のような高級ぶどう酒の産地では、収量を低く抑えることで、ぶどうの凝縮感を高め、風味豊かなぶどう酒を作っています。反対に、普段飲みのテーブルぶどう酒を大量生産する産地では、収量を高めに設定していることが多いです。そのため、収量の多寡だけでぶどう酒の良し悪しを判断することはできません。
一般的には、1ヘクタールあたり100ヘクトリットルを超えると収量が多いとされ、コクと深みに欠けるぶどう酒になりがちです。逆に、50ヘクトリットルを下回ると収量が低いとされ、凝縮感があり、複雑で奥深い味わいのぶどう酒が期待できます。ただし、これはあくまでも目安であり、栽培方法や気候条件など、様々な要因がぶどう酒の品質に影響を与えます。
収量を調整する方法としては、剪定や摘房などがあります。剪定は、冬場に余分な枝を切り落とすことで、ぶどうの房の数を調整する方法です。摘房は、夏場に生育途中のぶどうの房を間引くことで、残った房に栄養を集中させる方法です。これらの作業によって、ぶどうの成熟度や糖度をコントロールし、目指す味わいのぶどう酒を作り出しています。また、近年注目されている「グリーンハーベスト」という手法は、成熟する前に一部の果実を落とすことで、残った果実に養分を集中させる高度な技術です。このように、丹精込めて育てられたぶどうから、個性豊かな様々なぶどう酒が生まれています。