ブドウの栽培 傾斜地に咲くワインの秘密:捧仕立て
捧仕立てとは、傾斜のきつい土地でぶどうを育てるための、特別な方法です。まるで人が何かを捧げ持つような形をしているため、この名前が付けられました。一本の支柱を地面にしっかりと立て、その周りにぶどうの枝を放射状に伸ばし、中心の支柱を囲むように仕立てます。上から見ると、ハート型に見えることもあります。この仕立て方は、急な斜面で特に力を発揮します。傾斜が急な場所では、横に支柱や針金を張って仕立てる、垣根仕立ては難しくなります。また、棚仕立てのように、高い位置に棚を作るのも容易ではありません。捧仕立ては、そのような場所で、比較的簡単にぶどうを育てることを可能にします。地面に立てた一本の支柱を中心にするため、複雑な構造物は必要ありません。捧仕立ては、それぞれのぶどうの木に個性を与えます。太陽の光を浴びる角度や、風の当たり方など、周りの環境によって、枝の広がり方や実の付き方が変わってきます。そのため、同じ捧仕立てでも、全く同じ形になることはありません。まるで、その土地の地形や気候に合わせて、一つ一つ丁寧に仕立てられた、注文服のようです。急斜面という厳しい環境を逆手に取り、独特の景観と、個性豊かなぶどうを育む、知恵と工夫が詰まった方法と言えるでしょう。さらに、この仕立て方は、作業の効率化にもつながります。ぶどうの枝が支柱に沿って放射状に広がるため、剪定や収穫などの作業がしやすくなります。また、風通しが良くなるため、病気の発生を抑える効果も期待できます。このように、捧仕立ては、厳しい環境下で、高品質なぶどうを育てるための、先人の知恵が詰まった、優れた栽培方法と言えるでしょう。
