地品種

記事数:(1)

ブドウの品種

幻のワイン、フェルナッチの魅力

イタリア北部のアルト・アディジェ地方。険しい山々と緑豊かな谷が織りなすこの土地には、古くから受け継がれてきた独自の文化と歴史があります。その歴史を語る上で欠かせないもののひとつが、フェルナッチという黒ブドウです。今では幻と呼ばれるほど希少なこのブドウは、かつてこの地方で広く栽培され、人々の生活に深く根付いていました。第一次世界大戦以前、アルト・アディジェの多くの畑でフェルナッチの力強い蔓が空に向かって伸び、秋にはたわわに実った房が収穫されていました。人々はこのブドウから、日々の暮らしに欠かせない飲み物を作り、また、地域経済を支える重要な産物としていました。しかし、時代の大きなうねりは、このブドウの運命を大きく変えてしまうことになります。戦争や社会の変化、そして他のブドウ品種の台頭により、フェルナッチの栽培面積は徐々に縮小していきました。かつては至る所で目にしたこのブドウは、いつしか希少な存在となり、人々の記憶からも薄れていきました。それでも、この土地の風土と、このブドウを愛する人々の情熱は、フェルナッチの命脈を繋ぎ続けました。スキアーヴァという別名でも呼ばれるこのブドウは、細々とではありますが、大切に育てられ、その伝統と味わいは守り続けられてきました。そして今、フェルナッチは再び注目を集めています。幻のワインと呼ばれるその希少性と、歴史に裏打ちされた深い味わいは、多くのワイン愛好家たちの心を掴み、探し求める人々が後を絶ちません。古くからの文献をひもとけば、このブドウがどれほどこの地域で大切にされてきたか、そして人々の生活にどれほど深く関わってきたかを理解することができます。フェルナッチは、まさにアルト・アディジェの歴史そのものを体現していると言えるでしょう。