メトード・アンセストラル

記事数:(2)

ワインの種類

クレレット・ド・ディー:伝統の泡

フランス南東部のローヌ地方に、ディーという地域があります。ディーとは、ローマ神話の狩猟の女神ディアナに由来する名前で、紀元前1世紀にローマの属州となった際に名付けられたと言われています。この地ではローマ帝国時代から続く、二千年以上もの長い歴史の中で、ブドウ栽培が盛んに行われてきました。クレレット・ド・ディーは、まさにこの歴史あるディーの地で古くから造られてきた発泡性葡萄酒です。クレレット・ド・ディーは、その名の通り、発泡が繊細で軽やかなのが特徴です。口に含むと、小さな泡が優しく舌をくすぐり、心地よい刺激を与えます。この繊細な泡立ちは、伝統的な製法によって生み出されています。長い歴史の中で培われた技術と経験が、この独特の風味を支えているのです。ディーの温暖な気候と水はけの良い石灰質の土壌は、ブドウ栽培に最適です。特に、小粒のマスカットと呼ばれるミュスカ・ア・プティ・グランという品種は、この地の風土によく合い、高品質な葡萄酒造りの要となっています。このブドウは、豊かな香りと爽やかな酸味を持ち、クレレット・ド・ディーに独特の風味を与えています。太陽の恵みをたっぷり浴びて育ったブドウは、丁寧に収穫され、伝統的な製法によって発泡性葡萄酒へと姿を変えます。こうして生まれたクレレット・ド・ディーは、歴史と伝統が凝縮された、まさにディーの地の宝と言えるでしょう。
ワインの醸造

瓶内二次発酵が生む自然な泡、アンセストラル製法

お酒に溶け込んだ小さな泡は、古くから人々を魅了し、祝いの席を彩ってきました。様々な泡の製法の中でも、『祖先伝来の製法』と呼ばれるものは、その名の通り古くから伝わる素朴な製法です。この製法は、自然の力を最大限に利用した泡の生み出し方と言えるでしょう。まず、収穫したばかりの葡萄の果汁を、まだ発酵途中の段階で瓶詰めします。すると、瓶の中で酵母が再び働き始め、糖分を分解し始めます。この時に発生するのが炭酸ガスです。密閉された瓶の中にガスが充満することで、自然と泡が生み出されるのです。人工的に炭酸ガスを注入する方法とは異なり、葡萄本来の力と酵母の働きが織りなす泡は、独特の風味と繊細な舌触りを与えます。この製法は、現代の技術主導の製法とは大きく異なります。発酵の進み具合を見極めるには、長年の経験と勘が必要です。また、瓶内での発酵は、常に変化する自然環境に左右されるため、同じ製法を用いても、年によって味わいが異なるのも特徴です。大量生産される均一的な味ではなく、その時々の自然の恵みを反映した個性的な味わいは、まさに自然の摂理が生み出す芸術と言えるでしょう。古くから受け継がれてきた『祖先伝来の製法』は、時代の流れに左右されない、自然と共に歩むお酒造りの心構えを今に伝えています。