スパイス香

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ブドウの品種

魅惑の香り、ゲヴュルツトラミネール

ゲヴュルツトラミネール。耳慣れない名前かもしれませんが、一度その香りを嗅げば、忘れられないほど心に残るぶどうの品種です。この品種のルーツを探ると、フランスのジュラ地方にたどり着きます。そこで作られるヴァン・ジョーヌという黄金色のぶどう酒に使われる、サヴァニャンという白ぶどうと、実は同じ仲間なのです。サヴァニャンが姿を変えたもの、突然変異で生まれたものが、ゲヴュルツトラミネールなのです。サヴァニャンは皮の色が緑色ですが、ゲヴュルツトラミネールは桃色をしています。この色の違いが、独特の香りの秘密を握っています。名前の由来もまた興味深いものです。「ゲヴュルツ」という言葉はドイツの言葉で「香辛料のような」という意味です。その名の通り、白胡椒やコリアンダー、生姜といった香辛料を思わせる香りが特徴的です。しかし、その香りは香辛料だけにとどまりません。バラや桃、ライチ、蜂蜜といった華やかな果物の香りも持ち合わせており、複雑で奥深い香りを織り成しています。この多様な香りの要素こそが、ゲヴュルツトラミネールが多くの人を惹きつける最大の魅力と言えるでしょう。まるで香りの万華鏡のようです。ピンク色の果皮が、ライチやバラの香りのもととなるテルペン類と呼ばれる香りの成分を多く含むため、他の白ぶどうにはない独特の芳香が生まれます。この香りは、ワインになった後も華やかに広がり、飲む人を楽しませます。ゲヴュルツトラミネールは、まさに香りの芸術作品と言えるでしょう。
ブドウの品種

知られざるワイン品種、オジャレシの魅力

遠い異国の地、ジョージア。険しい山々が連なる北西部に、古くから人々と共に生きてきたブドウがあります。その名はオジャレシ。耳慣れない響きを持つこの名は、ジョージアの中でも限られた地域、メグレル地方で使われている言葉で「樹で育つブドウ」を意味します。まさに、その言葉通り、かつてのオジャレシは、高木仕立てで空高くまでツルを伸ばし、まるで大地の力強さを体現するかのように育てられていました。想像してみてください。空高く広がる緑の葉の下に、たわわに実った黒ブドウの房。人々は長い梯子を使って収穫し、その恵みから豊かな味わいの葡萄酒を醸造していたことでしょう。その歴史は、ブドウの根が土深く伸びるよりもずっと古く、ジョージアの人々の生活に深く根付いていたのです。19世紀後半、ヨーロッパを襲ったフィロキセラ禍。この壊滅的な病害は、多くのブドウ畑を荒廃させ、伝統的な栽培方法も大きな変化を余儀なくされました。オジャレシも例外ではなく、かつてのような高木仕立ては姿を消し、現代ではギュイヨ仕立てなどの、より管理しやすい方法が主流となっています。しかし、かつて巨木として育てられていたという歴史は、このブドウ品種の神秘性と力強さを物語る、大切な記憶として今も人々の心に刻まれています。今では、その希少性から、幻のブドウとも言われるオジャレシ。その深い味わいを想像しながら、遠いジョージアの地を思い描いてみるのも良いかもしれません。