ワインの生産者 ヴーヴ・クリコ:シャンパーニュの女王
発泡ぶどう酒の有名な産地の中心にあるランスという町に、長い歴史を持つぶどう酒蔵、ヴーヴ・クリコがあります。その始まりは、今から二百五十年以上も前の千七百七十二年にさかのぼります。建てたのは、フィリップ・クリコという人でした。しかし、跡を継いだ息子のフランソワ・クリコは、若くして亡くなってしまいます。残された妻バルブ=ニコル・ポンサルダン・クリコは、まだ二十七歳という若さでした。夫を亡くした未亡人、つまりフランス語で「ヴーヴ」となった彼女は、夫の遺志を受け継ぎ、ぶどう酒造りを続けることを決意します。これが、「ヴーヴ・クリコ」という銘柄の始まりです。当時、女性が事業を営むことは大変珍しく、数えきれないほどの苦労があったことでしょう。しかし、マダム・クリコは、持ち前の才能と熱い思いで、様々な新しい工夫を凝らし、ぶどう酒造りに革命を起こしました。澱引きの技法を確立させたのも彼女です。これは、瓶の中で二次発酵を終えたぶどう酒から、澱を取り除き、透き通った美しい黄金色の飲み物に仕上げるための重要な技術です。マダム・クリコ以前は、澱を取り除く作業は難しく、ぶどう酒が濁ってしまうことも多かったのです。彼女はこの澱引きの技術を改良し、効率化することに成功しました。こうして、ヴーヴ・クリコは世界中で愛される銘柄へと成長し、マダム・クリコの名は、発泡ぶどう酒の歴史に燦然と輝いています。まさに、発泡ぶどう酒の世界における女王と呼ぶにふさわしい、偉大な女性です。
